2019. 05. 22
【岡山県・真庭市】Maniwa HACCO Tourism (まにわ発酵’s ツアー)②落酒造場
落酒造場
最初に見学させていただいたのは、備中川に隣接した場所にある「落酒造」。
蔵の周りの山々には鍾乳洞、石灰岩石があるカルスト地形と呼ばれる土地で、
川の栄養が豊富なことから、6月には5kmに渡り蛍が舞う自然豊かな地域です。
落酒造は創業1893年(明治26年)、「大正の鶴」が代表的な銘柄の酒蔵です。
ご案内くださったのは、5代目であり現在杜氏を務める落昇(おち のぼる)さん。
(写真左)創業当初から今も変わらず井戸から湧き上がる天然水を使用
(写真右)試飲した仕込みに使用される中硬水
落酒造の最大の特徴は、備中川の伏流水である「中硬水」を使用し日本酒を造ること。
日本は軟水が一般的なので硬水を使用することは珍しく、カルシウムなどのミネラル分が多いことから、
酵母にとっての栄養があり発酵が進みやすく製造管理が難しいとされています。
主に使用する米は「朝日米」。
朝日米は岡山県の在来品種で、一般的によく知られているコシヒカリの親にあたる米です。
粒が大きく旨味があり、食用米としても食されています。
酒造りは糀作りから始まります。
落酒造場では1回あたり10~500kgの米を使用、洗米を10kgずつとかなり小分けにし糠切れをよくし、
浸漬した際の吸水率、水切り蒸しの火入れが均一になるよう、とても丁寧な糀造りをされています。
糀は、厚い木の扉とすくもと呼ぶ茅や籾殻で囲った麹室(こうじむろ)で造っているのも特徴で、
ひと手間を惜しまない酒造りをされています。
約2週間低温で米をゆっくり溶かして強い酵母を造り、
3週間~4週間かけ三段仕込みを行い、酒造りを行います。
試飲させていただいた日本酒6種。
朝日米は透明感のあるキレのよい味に、
雄町米は米が軟らかく溶けやすいため濃醇な味になる傾向があります。
(朝日米)
・特別純米酒無濾過原酒
・特別純米酒「RISING」
・純米吟醸
・純米大吟醸
(雄町米)
・純米酒
・他1種
飲み比べしながら説明を受けると、より分りやすく理解も深まります。
店舗詳細
株式会社 落酒造場
住所:〒716-1433 岡山県真庭市下呰部664-4
TEL:0866-52-2311 FAX.0866-52-4495
HP:http://www.taishonotsuru.com/
日本酒について
◆日本酒の原料は「水」「米」の2つ
◆日本酒の製造工程
①精米:玄米を精米し、造るお酒の種類により磨きの(削る)%が変わる
②洗米:米を洗って糠を取る ※糠が残ると雑味が出る
③浸漬:米に吸水させる ※種類や気候により時間は変化する
④蒸米:こしきと呼ばれる大きなせいろor蒸米機で蒸す
⑤放冷:冷ます
⑥麹造り:製麹(せいきく)とも呼ばれる、麹菌を米に付着させ菌を繁殖させる
⑦酒母造り(もとつくり):(麹+水)+(酵母+乳酸菌+蒸米)→2週間~1ヶ月置く
※酒母(もと)=アルコール発酵を促す酵母を大量に増殖させたもの
⑧仕込み:タンクに酒母を入れ、麹+蒸米+水を入れ3週間~1ヶ月置く=もろみ
※酒母の中に麹・蒸米・水を入れる際は全量でなく3回に分けて入れる=三段仕込み
一気に入れてしまうと高濃度になり、発酵出来ないため分けて入れる
⑨上槽(じょうそう):もろみを圧搾し(絞り)、日本酒と酒粕に分けること
⑩濾過・火入れ:細かくなった米や酵母菌の固形物を取り除き、殺菌することで腐敗を防ぐ
⑪貯蔵・割水:熟成させるために貯蔵、銘柄に合わせて水を足して調整
⑫瓶詰め
◆食用米と酒米の違い
・酒米の方が粒が大きい傾向にある
心白と呼ばれる中心部分はデンプン質が多くデンプンの粘り気で米自体が砕けにくく溶けやすい性質があり、
精米し米の表面を削るので粒が大きい方が良い
・食用米に含まれるタンパク質や脂肪は食べると旨味となるが、酒になると苦みや雑味になる
◆仕込む酒で酒粕の量が異なる
・吟醸1t:50~60%の酒粕が出る
・純米1t:30%
◆杉玉
・別名を酒林(さかばやし)と言う
・杉の葉の穂先を集めてボール状にしたもので、緑色の杉玉は新酒が出来た合図になっており、
時間の経過を経て茶色になった杉玉は熟成期間を示していると言われている